最近(2024年以降)発表した短歌のごく一部抜粋です。

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第68回短歌研究新人賞佳作『確かにゆれる』より5首抄

貧血の寸前にくる焦燥の、コンクリートブロックの手ざわり

話さないことの幾つか 手のひらを内側にしてひとはみな立つ

カーテンの柄に小鳥がいたことに気づいて今だれかと話したい

水を飲む一輪挿しとなってゆく内側のかたちを意識する

バゲットも静物画めく予報では止むはずだった雨のあかるさ


西瓜第15号 ともに欄掲載『Comet』5首

冬からのゆびに耳朶ふれられてめくれる幾ページかの記憶が

死について話していた、と気がついたときには 彗星の尾の残光

あの映画のあの果てしない結末をあなたは寂しいと思うこと

わかるのはいつも今さら感傷は遠い星よりとどく瞬き

すべてのわたしは一過性 惑星の模型の中をひとり巡った